寄稿─賛否両論の選挙制度改革、こんな見方も

東雲内閣は12月7日、公職選挙規約の改正案を衆議院に提出しました。
同改正案では衆議院の選挙制度を、
△7人区、6人区、5人区の各1区、3人区が計4区の大選挙区で定数30名であったものを、
△小選挙区が計14区、定数7名の比例区が計2区の定数28名に改めるものです。
事務局の記録によると、2022(令和4)年3月5日の改正公職選挙規約により現行の大選挙区制単記非移譲式投票(中選挙区制)が導入されており、改正案が成立した場合約9ヶ月ぶりに小選挙区比例代表並立制(並立制)が復活することになります。
また、規約改正権が事務局から国会に移管されて以来初の選挙区制度の改革となります。
改正案について、救国戦線の後宮紗音総務大臣は、小選挙区制の作用による「議院第一党の安定多数の確立」によって「単一の与党に人材、責任、権力を集中」することで、「責任と能力を持った与党」と「与党の方針に対して監視・批判を行うその他の野党」といういわゆる多数決型の議会政治における政党という「まっとうな姿に戻す」ことを目的としているとしています。
これに対し、救国戦線の押風衆議院議員となめこ衆議院議員は「後宮紗音主義を決死擁護する」とし、賛成しているものとみられます。
一方で、改正案に対して様々な声が上がっています。
野党・立憲革新党の希望の輪衆議院議員は「少数政党が淘汰される」とし、「真っ当な野党になりたくない」として改正案に反対しています。
また、旧中央民主党で選挙制度改革案の起草に携わった最上博士氏は「小選挙区をひとつの政党(政党連合)が独占するという実証がある」として、改正案の根拠となる内閣の想定に疑問を呈しました。
他にも、事務局員などを歴任した五岳フィロソフィー氏は、内閣は「野党が連合して活発になることを期待している」と推測する一方で「野党が更に動かなくなって与党の一人芝居状態になる」可能性があるとして、改正案は「ある意味ギャンブル法案」であるとの見解を示しています。
賛否両論が出る今回の改正案。
果たしてどのような見方をすればよいのでしょうか。
今回、過去の事例を参考に検証してみました。
■過去の選挙では
衆議院議員総選挙(衆院選)の選挙区制度は、選挙区数や選挙区定数の変更を経ながら、
△第1回から第2回、第5回から第11回までの9回は小選挙区比例代表並立制、
△第3回から第4回までの2回は大選挙区制と比例代表制の混合制、
△第12回から第16回までの5回は大選挙区制となっています。
制度の細部の差異から単純な比較は困難ですが、各政党の得票数と獲得議席がともに現存する最古の並立制導入下における衆院選である第8回衆院選では、
△与党連合「世論派」と事実上の選挙協力を行っていた日幕党[注]が、比例で平均して約64%の得票率に対し全小選挙区の95%にあたる19議席を獲得する一方、
▲野党連合「国志会」「日本中央連合」は、比例で平均して約36%の得票率に対して小選挙区では1議席も獲得できませんでした。
第9回衆院選では、
△与党連合「練政倶楽部」と自由リクード党が、比例で平均して約56%の得票率に対し全小選挙区の100%にあたる20議席を獲得する一方、
▲野党の4党1政党連合は、比例で平均して約44%の得票率に対し小選挙区では1議席も獲得できませんでした。
第10回衆院選では、
△選挙後の内閣で連立与党となる共和海賊党など3党が、比例で平均して約56%の得票率に対し全小選挙区の85%にあたる17議席を獲得する一方、
▲選挙後野党となる7党は、比例で平均して約44%の得票率に対し小選挙区では全小選挙区15%にあたる3議席しか獲得できませんでした。
第11回衆院選に関しては、選挙結果の詳細が公表されていないため調査できませんでした。
■小選挙区ではどのような結果になるのか
検証可能な3回の衆院選の結果について、
△選挙後に小選挙区における獲得議席が多数となった政党(政党連合)を「優位政党」または「優位政党連合」、
▲選挙後に小選挙区における獲得議席が少数となった政党(政党連合)を「劣位政党」または「劣位政党連合」とすると、
優位政党(政党連合)の比例平均得票率と小選挙区獲得議席率、劣位政党(政党連合)の比例平均得票率と小選挙区獲得議席率はそれぞれ、
△第8回衆院選では約64%と95%に対し約36%と5%、
△第9回衆院選では約56%と100%に対し約44%と0%、
△第10回衆院選では約56%と85%に対し約44%と15%と、
それぞれ比例平均得票率と小選挙区獲得議席率で乖離が起こっています。
小選挙区制における得票率と小選挙区獲得議席率の差異に関する経験則として有名な「三乗法則」を用いて、優位政党(政党連合)の法則上の小選挙区獲得議席率と実際の小選挙区獲得議席率を比較すると、
△第8回衆院選では約85%に対し約95%、
△第9回衆院選では約67%に対し約100%、
△第10回衆院選では約67%に対し約85%と、
小選挙区制における過剰代表の傾向から見ても一層過剰に代表されています。
■なぜ小選挙区ではそのような結果になるのか
どうしてこのような現象が起こるのでしょうか。
前述の最上氏は、空想国会の投票制度にその理由があると指摘しています。
『無党派層の投票・浮動票が少ない空想国会において、票田(特定の政党に対して投票する忠誠度の高い投票者グループ)を有している政党の参加している政党ブロックが圧倒的に有利であるからである。』
(「中央民主党 空想国会選挙制度改革案」より引用)
空想国会の投票制度では、有権者は全ての選挙区でそれぞれ1票を投じることができます。
つまり、選挙区において有権者の投票傾向が大きく変わることはなく、結果として殆どの選挙区で優位政党(政党連合)が優勢となります。
例外として、劣位政党(政党連合)または無所属であっても優位政党(政党連合)からの支持を獲得することで当選することが可能な例があり、第8回衆院選で主要な政党(政党連合)から対立候補が擁立されなかったハノイのおしゃぶり候補(当時)などが例として挙げられます。
■小選挙区では避けられないのか
小選挙区制を導入すると、このように優位政党(政党連合)が圧倒的に有利となる現象を避けられないのでしょうか。
最上氏は、「現実的ではない」としながらも一つの例を挙げました。
最上氏「例えば、有権者が投票できる選挙区をいずれか1つに絞ることで、全ての選挙区で同じ傾向に陥ることを避けられます」
しかし一方で、「現状の選挙全体の総得票数を考えると、ひとつの選挙区の総得票数は大幅に減ることになり、いわゆる『票割り』も現状の大選挙区制より難しくなる」と指摘します。
空想国会の根幹となる、選挙制度。
果たしてどのような制度が最善なのか、これからの国会での議論に期待がかかります。
[注]「日幕党」は、「日本幕府文化保全奥羽越列藩同盟共和海賊党系列任侠桂組薩長徳川連合党」の略称
記者:寄稿。匿名希望。
(写真:ゲリマンダーに抗議する女性、アメリカ合衆国)

0コメント